2013/12/15

【要出典】「日本右翼が五大売国奴を批判」と中国報道?レコードチャイナのいい加減さ

レコードチャイナが「『日本右翼が五大売国奴を批判』と中国報道、中国ネットユーザーの反応とは―中国メディア」と題して、以下のように伝えている。

2013年12月14日、金鷹網は記事「日本右翼メディア、蒼井そら、矢野浩二など五大売国奴を批判」を掲載した。 

ある「日本の総合軍事メディア」の報道によると、中国人に愛されている日本の著名人5人が日本では売国奴扱いされているという。その5人とは中国で活躍する俳優の矢野浩二さん、鳩山由紀夫元首相、宮崎駿監督、タレントの蒼井そらさん、小説家の井上清さんだという。 

この「五大売国奴」の記事は今年8月に米華字紙・多維網が報じたおもの。ただしその記事では「日本の総合軍事メディア」が報じたという文言はなく、多維網の記事が転載される過程で付け加えられた情報とみられる。 

なんともいいかげんな記事だが、1400件ものコメントがついている。日本を批判するコメントもあるが、「日本にはたった5人しか売国奴がいないの?中国の売国奴がそんなに少なかったら、ずっと昔に日本を滅ぼせていたよ」「日本の友人に敬意を評して、蒼井そら先生の海賊版AVをダウンロードします」「鳩山由紀夫って首相だっけ?」「いや元首相でしょ」「蒼井先生愛している」などのコメントも残されていた。(翻訳・編集/KT)

レコードチャイナ:「日本右翼が五大売国奴を批判」と中国報道、中国ネットユーザーの反応とは―中国メディア ※16時40分、記事が削除されたのを確認した。
「日本右翼が五大売国奴を批判」と中国報道、中国ネットユーザーの反応とは―中国メディア (Record China) - Yahoo!ニュース

レコードチャイナ記事のいい加減さ

「なんともいいかげんな記事」と断ずるこの記事こそ、いい加減な記事そのものだ。

レコードチャイナは、これを「金鷹網は…を掲載した」とするが、実際に金鷹網の記事を見ると、「騰訊娯楽が伝えるところによると」とある。この騰訊娯楽は、その名の通り、エンタメ情報を伝えるものだ。海外のエンタメ情報紙の報道を、政治的な文脈に持ちこむレコードチャイナ紙は、どうかしているのではないか。

レコードチャイナは、「この『五大売国奴』の記事は今年8月に米華字紙・多維網が報じたおもの(ママ)。ただしのその記事では『日本の総合軍事メディア』が報じたという文言はなく、多維網の記事が転載される過程で付け加えられた情報とみられる」と、しょうもない妄想を発揮している。

きちんと騰訊娯楽の記事を見れば、「日本の総合軍事メディアが、中国人に愛されている五人は、日本にとっては売国奴である、と報じている」とあり、一次報道の時点ですでにこの文言が入っていたことが分かる。ここでいう日本の総合軍事メディアとは、『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』の4049号を指している。Googleで検索すればすぐに見つかるものだ。

この『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』は、総合軍事メディアと呼ぶにはまったく似つかわしくないが、騰訊娯楽の指摘する事実は存在しているわけであり、レコードチャイナはみずからの取材不足によるデタラメを、中国メディアのせいにしているのである。

そして、この『早読み』4049号を見ると、「多維新聞網(2013年8月11日付け)によれば、これら五人は『日本の右翼が“売国奴”と非難している』と解説が附せられている」とあり、ここで多維新聞網の解説とされているものは、以下のページである(1つの記事が複数ページに分割されている)。

  1. 五位“背叛日本”的日本人_军事_多维新闻网
  2. 五位“背叛日本”的日本人_军事_多维新闻网
  3. 五位“背叛日本”的日本人_军事_多维新闻网
  4. 五位“背叛日本”的日本人_军事_多维新闻网
  5. 五位“背叛日本”的日本人_军事_多维新闻网

『早読み』では、「中国で『英雄』視されている五人の日本人がいる」としているが、多維新聞網が書いているのは、「日中関係が悪化すると、民間人が交流しただけで自国民から『売国』『裏切り』と非難される」というものであり、続けて「日本の極右勢力にとっては、この五人が裏切り者に見えるようだ」としている。どこにも「英雄」などという文言はない。宮崎正弘氏はどこからこの文言を持ってきたのだろうか。

なお、井上清氏について、多維新聞網は「学者」、騰訊娯楽と金鷹網は「左翼歴史学者」としている。レコードチャイナは、どこから「小説家」という文言を持ってきたのだろうか。

伝言ゲームのまとめ

多維持新聞網
「日中関係が悪化すると、民間人が交流しただけで自国民から『売国』『裏切り』と非難される。日本の極右勢力にとっては、この五人が裏切り者に見えるようだ。」
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
「中国で『英雄』視されている五人の日本人がいる。これら五人は『日本の右翼が“売国奴”と非難している』と解説が附せられている。」
騰訊娯楽金鷹網
「日本の総合軍事メディアが、中国人に愛されている五人は、日本にとっては売国奴である、と報じている。」
レコードチャイナ
(記事全体がデタラメなので要約できず。全文は前掲の通り)

[12月17日0時追記]騰訊娯楽(14日0時6分配信)より古い記事を見つけた。汽車&世界(13日21時44分配信)である。文章もほぼ同じようであるが、最後の矢野浩二氏に関する段落は欠けている。従って、伝達経路は宮崎『早読み』→汽車&世界→騰訊娯楽、そして騰訊娯楽が矢野浩二氏に関する段落を追加した、ということになるだろう。[/追記]

[12月17日16時追記]中国のライター劉彦偉さんが検証記事を書いていたので、紹介記事を書きました。[/追記]

13 件のコメント:

  1. 文脈をよく見てみれば、わかってきました。たぶん、「日本の総合軍事メディア」になってしまったのが、翻訳が雑だったからです。「日本綜合軍事媒體」という文はぱーっと読むと、なんらかのメディアの名称のようなのですが、実は「日本・綜合・軍事媒體」というふうに間を入れて読めば、「日本が軍事メディアを総合する」という意味になってしまいます。

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    1. 翻訳者と編集者の間に誤解が生じ、さらに偏見を持ったメディアだから、適当に話をつなげれば、こういうふうにふざけた報道ができあがり・・・

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    2. うーん、そうなんでしょうかねえ。でも、それは少し疑問です。

      騰訊娯楽には「据日本综合军事媒体发表的报道…」とあります。これを「日本が軍事媒体の発表した報道を総合した…」と読んでしまうと、「据」の行き場がなくなります。むりやり読むと、騰訊娯楽は「日本(政府)」の発表に依拠したことになってしまいます。もちろん、日本政府がそのような発表をすることはありえません。

      また、騰訊娯楽の引用した文章は、引用の順番を少し変えていますが、『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』の内容とまったく同じです。

      だから、騰訊娯楽のいう「日本综合军事媒体」が、『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』4049号であることは、まず間違いないと思います。

      一方、騰訊娯楽のほうにも勘違いがあり、『宮崎正弘の国際ニュース・早読み』に出ていた多維新聞網のことを、日本のメディアだとしています。

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    3. 私も説明が雑だったかしらw

      たぶんね、翻訳者が「日本综合军事媒体」という、いろんな解釈のできる文に翻訳しました。編集者がそれを見て、勘違いして、あやふやでないニュース文体に書き直し、「据日本综合军事媒体发表的报道」になってしまったでしょうw

      もちろん、責任は騰訊娯楽などのメディアにあり、弁解してあげるつもりもありません。ただ、そっちもそっちですから、どうして「日本综合军事媒体」になってしまったのかを勝手に推測を申しただけです。気にしないでくださいww

      実は、中国人の友達も結構いて、昨日みんなで一生懸命その「日本综合军事媒体」の正体を探ってきました。この記事のおかげで、前述の仮説をふっと思いつき、友達にも納得してもらいました。ありがとうございますww

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    4. あ、なるほど。いま分かりました!

      もともと宮崎正弘さんが「(多維新聞網などの)軍事メディアなどを総合すると…」と書いていたのを、騰訊娯楽などが記事にしたとき、「日本(日本人の宮崎正弘さんが)軍事メディアなどを総合したところに拠ると…」に変化してしまった、ということですね。納得しました。

      ご指摘ありがとうございました。

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    5. 宮崎正弘さんのいう「軍事媒体」というのも、多維新聞網ではなくて、新華網の軍事頻道を指すかもしれないんですね。

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    6. そうですね。
      てか、ネットの情報をまとめて、新聞記事にしただけで、こんな大騒ぎになるのも、現在中国メディアの現況でしょう。
      新聞紙やテレビ新聞などをとっくに信用していない民衆が、メールやネットで真実を求めてきました。最初に政府が封殺しようとしていたが、抑えきれず、逆に新しいメディアを利用しようと考えたんでしょう。

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    7. ネットの無責任な書き込みを、既成メディアが取り上げるのは、中国だけのことではないです。ネット掲示板を元にした報道をするメディアが、日本にもたくさんあります。

      そして今回は、中国メディアが「日本メディアがこんなことを書いている」、日本メディアが「中国メディアがこんなことを書いている」と互いに言いあって、だんだん騒ぎを大きくしたんですよ。

      劉彦偉さんの論証記事が参考になったので、こちらで取り上げました。
      http://yunishio.blogspot.jp/2013/12/aoi-sora-is-not-traitor.html

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    8. もちろん、これという確証はありませんが、この騒ぎは意図的に作られたものだと感じます。いつも新浪ウェイボを使っているのでわかります。
      政府が許していない限り、あれほど取り上げられることはありません。まして、各メディアまで転載していて、香港の新聞紙にまで載っていました。普通の作り話だとしたら、とっくに改ざんしたり封殺したりしてるはずです。
      ま、いつものことですから、驚きもしませんが、今回も「なぜ」がポイントだと思います。何かを隠蔽しようとしているのか、それとも、何から目をそらせようしているのか、意味深いですねw

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    9. なるほど、そうかもしれませんねえ。

      劉彦偉さんの指摘するように、南京事件のあった12月13日に広められた、というのが大きいと思います。この日だから、反日感情を余計に呼び起こすようなデマを、当局者は禁止しなかったのでしょう。

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    10. いま、劉彦偉さんの書かれた記事を見てきましたが、反日感情を呼び起こすことより、矢野浩二さんを宣伝するのほうが本意だと、劉彦偉さんが考えていたようです。
      私もそう思います。いくらなんでも、矢野浩二さんや蒼井そらさんのようなタレントを『五大売国奴』として取り上げるのが、ふざけすぎるように思います。怒りよりあざ笑いがこみ上げてきたでしょう。そのせいで、ウェイボでは、みんな南京事件のことを忘れ、「五大売国奴」をめぐって議論してました。まさに逆効果でしたww

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    11. もともと流れていた話を、騰訊網がエンタメ情報の1つとして紹介したら、それが大げさに取り上げられたということなんでしょうね。歴史学者や政治家だけだったら、ここまでおかしな騒ぎにならなかったでしょう。

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    12. そうでしょうね。
      今朝まで、新浪ウェイボのホット話題ランク入りでしたが。
      ま、みんな忘れるのが早いから、いまや別の話題で盛り上がってるでしょうw

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