2013/01/01

第一次安倍内閣における河野談話への全言及(平成19年3月20日まで)

承前。

平成19年1月30日 参議院 本会議 第3号


○輿石東君
(略)
 安倍総理は、就任早々中国と韓国を訪問し、辛うじて対話の窓口だけは復活させることができました。しかし、このような中国や韓国との首脳会談の再開も手放しで評価するわけにはいきません。安倍総理は、今回の訪中を実現するに当たって、過去の政府が出した村山談話や河野談話を就任前まで自ら厳しく批判してきたにもかかわらず、突然自分の内閣で全面的に受け入れると表明しました。そのこと自体の是非はここではおくとしても、わずかな期間での余りの豹変ぶりに、安倍総理は本当に信念のある政治家なのか、国民は深い疑念を持っているのであります。
(略)


○内閣総理大臣(安倍晋三君)
(言及なし)

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0001/16601300001003a.html

平成19年2月19日 衆議院 予算委員会 第11号


○稲田委員 ぜひとも、その決議案の内容が客観的事実とは異なるんだという今の麻生大臣の御認識をアメリカに対しても発信していただきたいと考えております。
 こんな中で、こういった決議案が出される根本には、河野官房長官談話があると思います。というのは、この決議案の中でも、日本国内に、河野内閣官房長官談話の内容を薄めたり撤回したりすることを要望している、そういった動きがあるのが不当だということが書かれておりますので。
 そこで、官房長官にお伺いいたしますが、この河野官房長官談話、安倍総理も以前は非常に問題だというふうに認識を示されていたんですが、この談話を変えるとか撤回するとか、そういったおつもりが政府としてあるのかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。


○塩崎国務大臣 先ほど来稲田先生から御指摘のいわゆる慰安婦問題につきましては、政府の基本的な立場というのは、平成五年八月四日の河野官房長官談話を受け継いでいるというところでございますし、それは、安倍総理も同様のことを国会で答弁されていると思います。そういうことでございますので、政府としては、この談話を受け継いでいるということでございます。


○稲田委員 私は、内閣として受け継いだということは、それは理解するんですけれども、それが事実関係としてないというのであれば、その根拠がないというのであれば、やはり見直しも考えていただきたいと思います。
 総理は、予算委員会の質疑に答えて、強制性というのは狭義と広義があるんだと。狭義の、例えばこういう米国下院決議で書かれているような狭義の強制性はないけれども、広義の強制性はあるという趣旨なのか、ちょっとそこはわかりませんけれども、広義ということを言い出せば、本当に経済的理由で慰安婦になったとか、そういうことも含まれるのかもしれませんが、そういった点も含めてぜひ検討をしていただきたいと考えております。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0018/16602190018011a.html

平成19年2月21日 衆議院 内閣委員会 第2号


○松原委員
(略)
 次に、今、アメリカの下院の公聴会で慰安婦問題、これが二月十五日に行われました。北米時間の午後一時半から約三時間。この内容については、大体そういうことが言われるだろうということで、あえてここでは触れません。問題は、これに関して、これも国家の不名誉、事実と違う不名誉が明らかになっているのではないかな、それを非常に宣伝されているのではないかな、こういうふうに私は思っております。
 このことでお伺いしたいわけでありますが、これは外務省になるのか、石原信雄元官房副長官がこのことについて発言をしている、このことは承知していますか。


○伊奈川政府参考人 お答えします。
 先生おっしゃっておられますのは、平成九年三月九日の産経新聞の記事でのインタビューのことでございましたら承知をして……(松原委員「では読んでください」と呼ぶ)はい。読ませていただきます。
 日本側に証拠はないが、韓国の当事者はあると証言する。河野談話に、慰安婦の募集、移送、管理などが総じて本人たちの意思に反して行われたとあるのは、両方の話を総体として見ればという意味。全体の状況から判断して強制にあるものと謝罪したというふうなくだりがございます。


○松原委員 これは文芸春秋なんだな、ごめんなさい。文芸春秋に対して石原信雄さんが言っているのは、文書による証拠はなかったと。
 文書による証拠はあったということがあったかどうか、それだけお伺いしたい。


○伊奈川政府参考人 お答えします。
 いわゆる従軍慰安婦問題について、当時、政府として全力を挙げて調査を行ったわけでございますけれども、発見された公文書等の政府発見資料の中には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかったということでございます。


○松原委員 当時の日本軍は極めて規律厳正でありますから、やったならば必ず証拠は残っている。
 きょうは時間がありませんから、石原信雄さんはこう言っている。本人を強制的に徴用したということが文書にどうしてもない、手を尽くしたけれども、国内では本人の意思に反して強制という一点では確認されない。さらに石原氏は言っていますね。それで証言者を探そうということになりました、でもそれがどうしてもいないんです、日本国内においてと。これは一つの事実であります。
 そこで、河野元官房長官はこのことに対して、強制連行を証明する資料はないとしながら、強制連行そのものはあったと言っているわけですね。これはある本を今代読しています。彼の表現ですね。「「政府が法律的な手続きを踏み、暴力的に女性を駆り出した」と書かれた文書があったかといえば、そういうことを示す文書はなかった」「直接強制連行の話はなかった。しかし、総合的に考えると「文書や軍人・軍属の証言がなかった、だから強制連行はなかった。集まった人はみんな公娼だった」というのは正しい論理の展開ではないと思う」、河野さんはこれを言っているわけであります。
 このことについて、私は、証拠がなかった、全く証拠がなかった、しかし、だからといって、なかったというのはおかしいからあったんだというのは、極めて論理性に欠ける官房長官としての、塩崎官房長官の何代か前の先輩の官房長官でありますが、発言であります。私はこれは極めて、こういうふうな考え方をなぜ彼がしたのか、なぜこういう表現をしたのか、その辺のことについて官房長官の御所見をお伺いしたい。


○塩崎国務大臣 当時の石原官房副長官の、今のお話で、資料がないという中でどうしてこういう談話になったのか、こういう御質問だと思いますが、慰安婦の募集については、政府としてこれらの資料、なかなか書いたものではないというようなことで、政府発見資料の中には軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかったということなんですね、今それを御指摘になったところだと思いますが。
 ただ、そのときに、その当時の政府として、さまざまな他の資料を含めて総合的に判断して、この談話のような表現になったというふうに私は聞いております。


○松原委員 その他の資料がないわけであって、このことについて吉田清治という詐話師が著書を書いている。これも私、何回もこの質疑で言っております。その著書を書いた吉田何がしが、これは週刊新潮か何かに問い詰められて、おかしいじゃないかと言ったら、事実を書いて何がおもしろいか、事実を書いたって本は売れない、こう言っているわけでありまして、そういうふうな状況の中でつくり上げた虚構を、いいですよ、それは吉田何がしの詐話師のことはもう皆さん知っていることですからいいですが、河野元官房長官が、全く文書がなかった、文書がなかったら普通はないというんですよ。文書がなかった、証拠はなかった、ないですよ。
 恐らく、私は慰安婦の方々は被害者だと思います。しかし、それはいわゆる軍によってではなくて、当時の公娼制度という中における被害者だと私は思っているんです。それは日本の中にもいたんです。吉原に当時そういった被害者はたくさんいたと思います。冷害で米が売れなくなったら、東北の方々、ほかの地域もそうです、娘を女衒に安く売って、そういったことはあったかもしれない。被害者ですよ、彼女たちは。
 しかし、それと従軍、軍がそれに関与したかというのは全く別の議論だというのは当たり前でありまして、そういった文書が全くないのに、いや、強制連行だったというふうに言う方が正しいというのは、明らかに、だれが考えたって非論理的な展開だと思います。これは論理的な展開だと思いますか。官房長官、もう一回答弁をお願いします。


○塩崎国務大臣 記述がなかったというのは先ほど申し上げたとおりでありますけれども、当時は、書いた資料、書き物としての資料だけではなくて、各種証言集とか証言とか、それから韓国にも出向いて証言を聴取していたわけでございまして、そういうところで総合的に判断をして、いわゆるこの談話にある、甘言、強圧による等、本人の意思に反して集められたケースもあったという心証を得た次第、こういうことだと思いますので、安倍総理も国会の中で答弁をしておりますけれども、強制性についての、広義、狭義の強制性があるということを踏まえて、河野談話を変更するものではないという答弁を安倍総理としてもしているところでございます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0002/16602210002002a.html

平成19年3月5日19/03/05 参議院 予算委員会 第3号


○小川敏夫君
(略)
 慰安婦問題、正にアメリカの下院においてこの慰安婦について日本国が謝罪すべきだというような決議案が出るかもしれないというような状況になってございます。総理は、この慰安婦問題について国の責任を認めた宮澤内閣時代のこの河野当時官房長官談話、これについてまずどのようにお考えですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) この談話につきましては、さきの国会で答弁をいたしましたように、この河野官房長官談話ということにつきましては基本的に継承していくということを申し上げているわけであります。


○小川敏夫君 最近、総理は強制はなかったというような趣旨の発言をされましたか、この慰安婦の問題について。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) その件につきましても昨年の委員会で答弁したとおりでございまして、この議論の前提となる、私がかつて発言をした言わば教科書に載せるかどうかというときの議論について私が答弁をしたわけでございます。
 そして、その際私が申し上げましたのは、言わば狭義の意味においての強制性について言えば、これはそれを裏付ける証言はなかったということを昨年の国会で申し上げたところでございます。


○小川敏夫君 この三月一日に強制はなかったというような趣旨の発言をされたんじゃないですか、総理。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) ですから、この強制性ということについて、何をもって強制性ということを議論しているかということでございますが、言わば、官憲が家に押し入っていって人を人さらいのごとく連れていくという、そういう強制性はなかったということではないかと、こういうことでございます。
 そもそも、この問題の発端として、これはたしか朝日新聞だったと思いますが、吉田清治という人が慰安婦狩りをしたという証言をしたわけでありますが、この証言は全く、後にでっち上げだったことが分かったわけでございます。つまり、発端はこの人がそういう証言をしたわけでございますが、今申し上げましたようなてんまつになったということについて、その後、言わば、このように慰安婦狩りのような強制性、官憲による強制連行的なものがあったということを証明する証言はないということでございます。


○小川敏夫君 今証言はないと言いましたね。しかし、実際にアメリカの下院において、アメリカ合衆国の下院において慰安婦をされていた方がそういう強制があったという証言をしている、だから下院で決議案が採択されるかどうかということになっているんじゃないですか。
 今証言がないとおっしゃいましたね。実際にそういう体験をしたというふうに証言している慰安婦が現にいるわけですよ。そういう人たちの発言は証言じゃないんですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 言わば裏付けのある証言はないということでございます。
 証言といえば、先ほど申し上げましたように、吉田清治氏の証言も証言じゃないんですか。全くこの人の証言はでっち上げだったということでございます。


○小川敏夫君 一度確認しますが、そうすると、家に乗り込んで無理やり連れてきてしまったような強制はなかったと。じゃ、どういう強制はあったと総理は認識されているんですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) この国会の場でこういう議論を延々とするのが私は余り生産的だとは思いませんけれども、あえて申し上げますが、言わば、これは昨年の国会でも申し上げましたように、そのときの経済状況というものがあったわけでございます。御本人が進んでそういう道に進もうと思った方は恐らくおられなかったんだろうと、このように思います。また、間に入った業者が事実上強制をしていたというケースもあったということでございます。そういう意味において、広義の解釈においての強制性があったということではないでしょうか。


○小川敏夫君 それは、業者が強制したんであって国が強制したんではないという総理の御認識ですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) これについては、先ほど申し上げましたように、言わば、乗り込んでいって人を人さらいのように連れてくるというような強制はなかったということではないかと、このように思います。


○小川敏夫君  だから、総理、私は聞いているじゃないですか。家に乗り込んで連れていってしまうような強制はなかったと。じゃ、どういう強制があったんですかと聞いているわけですよ。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) もう既にそれは河野談話に書いてあるとおりであります。それを何回も、小川委員がどういう思惑があってここでそれを取り上げられているかということは私はよく分からないわけでありますが、今正にアメリカでそういう決議が話題になっているわけでございますが、そこにはやはり事実誤認があるというのが私どもの立場でございます。


○小川敏夫君 アメリカの下院で我が国が謝罪しろというような決議がされるということは、我が国の国際信用を大きく損なう大変に重要な外交案件だと思うんです。
 それで、事実誤認だから、じゃ、そういう決議案をもしアメリカ下院がすれば、事実誤認の証言に基づいて決議をしたアメリカ下院が悪いんだと、だから日本は一切謝罪することもないし、そんな決議は無視する、無視していいんだと、これが総理のお考えですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、別に決議があったからといって我々は謝罪するということはないということは、まず申し上げておかなければいけないと思います。
 この決議案は客観的な事実に基づいていません。また、日本政府のこれまでの対応も踏まえていないということであります。もしかしたら委員は逆のお考えを持っているのかもしれませんが、こうした米議会内の一部議員の動きを受け、政府としては、引き続き我が国の立場について理解を得るための努力を今行っているところでございます。


○小川敏夫君 河野談話は、単に業者が強制しただけでなくて、慰安所の設置や管理、慰安婦の移送に対する軍の関与を認定したと言っておるわけです。このことについて総理は認めるんですか、認めないんですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) ですから、先ほど来申し上げておりますように、書いてあるとおりであります。


○小川敏夫君 書いてあるとおりは、書いてあるのは事実ですよ、書いてあるのは。総理がそれをそういうふうに思っていますかと聞いているんです。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) ですから、書いてあるとおりでありまして、それを読んでいただければ、それが政府の今の立場であります。


○小川敏夫君 私は、この問題についての国際感覚あるいは人権感覚といいますか、全く総理のその対応について、私は寂しい限り、むしろ日本の国際的な信用を損なうことになっているんじゃないかと思いますが。
 すなわち、下院において、そこで慰安婦の方が証言された、それが事実誤認だからもういいんだと言って通るほど、この国際環境は甘くはないと思います。むしろ、こうした人権侵害についてきちんとした謝罪なり対応をしないということのこの人権感覚、あるいは過去に日本が起こした戦争についての真摯な反省がやはりまだまだ足らないんではないかという、この国際評価を招く、こうした結果になっているんではないでしょうか。どうですか、総理。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は全くそうは思いません。小川議員とは全く私は立場が違うんだろうと思いますね。
 戦後六十年、日本は自由と民主主義、基本的な人権を守って歩んでまいりました。そのことは国際社会から高く私は評価されているところであろうと、このように思います。これからもその姿勢は変わることはないということを私はもう今まで繰り返し述べてきたところでございます。
 小川委員は殊更そういう日本の歩みをおとしめようとしているんではないかと、このようにも感じるわけでございます。(発言する者あり)


○小川敏夫君 大変な暴言でありまして、私は、アメリカの下院でそうした決議が出ると、出るかもしれない、既に委員会では決議が出ているわけで、今度は下院、院全体で決議が出るかもしれないと。そのことによって生ずる我が国のこの国際的な評価、これが低下することを憂えて言っているんですよ。


○委員長(尾辻秀久君) 速記止めてください。
   〔速記中止〕


○委員長(尾辻秀久君) 速記を起こしてください。
 質問を続けてください。小川敏夫君。


○小川敏夫君 私は、日本をおとしめるのではなくて、日本の評価が国際的により上がるようにということを願って、このアメリカの下院で、下院で決議が出るというのはこれは大変なことじゃないですか。そのことを憂えて私は質問をしておるわけですよ。それを、おとしめるとは何ですか。私が日本という国をおとしめるための発言だとはどういうことですか、総理。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小川委員はその決議が正しいということの前提に立っておっしゃっているんですか。まず、そのことをお伺いをしたいと思います。


○小川敏夫君 決議が出ることを心配して、決議が出ることによって日本の国際的評価が下がることを懸念して言っているわけですよ。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) ですから、この決議案には、決議案には明らかに事実誤認があるということを申し上げているわけでございます。


○小川敏夫君 被害者が議院で証言されているわけですね。その証言に基づいて下院が決議をすると。すると、その証言を信用ありとした下院の判断が間違いだと、だからもうそのことについては何の対応もしなくていいと、ただ事実誤認だと言っていればいいというのが安倍総理の姿勢ですか。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、小川委員の発言の中にも事実誤認は含まれています。まず、下院は判断をしていません。まだ案でしかないというわけでございます。そして、私たちは対応をしております。


○小川敏夫君 私は出たと言ってないじゃないですか。委員会では、いや委員会ではもう決議通ってますよ。ただ、下院の院としてはまだ出ていないし、しかし出たら困るでしょうと言っているわけです。
 総理、あなたが河野談話、これについて余り積極的にといいますか、前向きに取り組んでいるとは思えない姿勢がよく分かりました。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0014/16603050014003a.html

平成19年3月16日 衆議院 外務委員会 第3号


○前原委員
(略)
 一番初めは在外公館関連の法律案について議論しますが、事務方の方、後でいわゆる従軍慰安婦の問題について議論をさせていただきたいというふうに思っておりますので、河野談話、それから米下院で出されようとしている決議案を大臣の手元にお渡しいただいて、後ほどそれを参照しながら議論させていただきたいと思いますので、その点の用意だけ事前にお願いをしたいというふうに思います。
(略)



○前原委員
(略)
 さて、次に、いわゆる従軍慰安婦の問題についてお話をさせていただきたいというふうに思っております。
 たびたび国会でもいわゆる従軍慰安婦の問題については議論がなされてきているわけでありますけれども、この問題というのは、アメリカの下院で決議案が出される、こういうところから問題の発端が起きているわけであります。大臣は、この外務委員会だったと思いますけれども、過般の外務委員会で、この米下院で出されている決議案には事実誤認が多いということをおっしゃいました。私も実はそう思っております。どこが事実誤認なのかということは、やはりしっかりと指摘をしておかなくてはいけないんだろうというふうに私は思います。
 ただ、私の立場を少しお話しさせていただきたいというふうに思いますけれども、私の立場というよりは民主党の立場でありますが、慰安所あるいは慰安婦というものが存在をしたということは、防衛研究所の中から膨大に出てきた資料等を調査した政府の調査結果からも明らかだろうというふうに私は思っております。そしてまた、戦争でありますので、さまざまな、口ではあらわせないような行為があって、そういったものを防ぐために慰安所、慰安婦というものを設けるべきだという軍の指令というものも文書として残っているのも事実であろうというふうに思います。
 そういう意味では、強制性という言葉の意味というものが国会で議論されておりますが、これについては私自身は余り大きな意義を見出すことはありません。つまりは、慰安婦というものが存在をし、慰安所というものがあり、そしてまた甘言とか、あるいは連れてこられた場所で強制下に置かれた、監視下に置かれた、そしてひどい仕打ちを受けたというのは事実でありますし、数の問題でもないし、そして、強制連行のみ一つとって、それはなかったということを言うことが、この問題の解決、あるいは被害に遭われた方々に対する謝罪の意を表することにはならないというふうに私は思っています。
 私はそういう立場で話をしていますし、また、そういう意味では、河野談話というものは当然ながら踏襲をされるべきであるし、官房長官談話というものが、逆に言えば、なぜ総理ではないんだと。アジア女性平和基金からいわゆるお見舞金を出すときには、総理のお手紙が出されていて、それに対しては、総理大臣、小泉さんだったら小泉純一郎という名前でお手紙が出されているということもよく存じ上げております。しかし、談話として発表されたことが官房長官だったということも、何かダイレクトでない、つまりは総理が言っていないというふうなイメージを持たれているというのもこれまた事実だというふうに私は思います。
 そういう意味では、歴史のいわゆる狭義か広義かの強制性というところで議論をするのではなくて、実際に慰安所があって、慰安婦がいて、被害を受けられた方々がおられる、そして意に反して来て、そして違う仕事だった、そしてまた強制下、管理下に置かれてひどい仕打ちをされたような方々がおられるというのが事実でありますので、そういった観点に基づいて、真摯にやはり河野談話を踏襲して、被害に遭われた方々に対するおわびの気持ちというものを持ち続けることが大事だというふうに私は思っております。
 それが私どもの基本的な認識でありますが、しかしながら、言うべきことは言わなきゃいけない。だから、決議案については事実誤認がある、この点は事実誤認であるけれども、しかし、バット何々というところも必要だと思うんですが、この決議案を見られて、どのところ、余り言葉にしたくないような言葉もありますので、どのパラグラフだということでも結構でございますので、どの点がやはり事実誤認であって、それはしっかりと言わなきゃいけないけれどもというところをお話しいただければと思います。


○麻生国務大臣 前原先生、この話は、こういうところでやりますと、また往復になってきて、何となく話をさらに広げるのは、我々としては余り望むところではありません。
 したがって、問題点を一つ一つ言っていくというのは、これはちょっと正直申し上げて私どもとしては避けたいと思っておりますが、全体として言えるところで思っていましたのは、歴史的な責任を明確であいまいでない形で何とかかんとか公式に認め、これはもう既に十分にやっておると思っております。それから、公的な謝罪を日本の首相が声明をすべき、これもしておるわけでありまして、国会でもありましたし、答弁でもありましたので、こういったところはいかにも違うなと思いましたし、いかにも強制的で、ただでみたいな話で、ちょっとそれは、強姦とか奴隷とか、何かいろいろな表現がありましたけれども、そういったものとは少し違うんじゃありませんかというようなことは、一つ一つ挙げていけばいろいろあろうかと存じますけれども、私どもは基本として、今申し上げたようなところでは、この文書の内容に関してはいろいろ疑義があるのは率直なところであります。


○前原委員 アメリカ社会、すべて私は存じているわけではありませんが、やはり日本人以上に、日本人という言い方をすると、おまえはそうなんだというふうにおしかりを受けるかもしれませんが、私なんかよりはやはりアメリカの方々というのは人権意識というのが非常に強いんだと思います。また、いろいろな人種の方々がおられて、それで国家を構成しているという意味で、またそういう意識を持たなければいけない国であるというところも非常に大きな意味を持つんだろうと私は思います。
 あるアメリカの友人が言っていたのは、拉致の問題に対して極めて日本に対してシンパシーを持っているというのは、やはり人権問題である、拉致というのは人権侵害、主権侵害の最たるものであって、許すことができない、ですから、アメリカ、特にブッシュ政権は日本の拉致問題に対する態度を支持しているんだと。
 しかし、大臣御承知のとおり、この下院決議案の共同提案者というのは、拉致問題で日本に対してバックアップをする発言をされている方がかぶっている人もいるわけですよ。そういう意味では、こういう人権問題というものは、拉致の問題で我々に対して理解をしてくれている人たちが、同時に、我々は今国内で、先ほど外務大臣が、余り言い過ぎるとまたそれがハレーションを起こすという趣旨のことをおっしゃいましたが、私もそうだというふうに思いますが、ただし、事実誤認だけはやはりしっかり言っておいて、その上で、先ほど申し上げた、バット何々というところもしっかりとあわせて話をすべきではないかというふうに思います。
 したがって、二つのことをお聞きし、御答弁いただきたいわけであります。
 一つは、今具体例を挙げられましたけれども、やはり政府として、この決議案については、どこが事実誤認ではないかというふうに考えるかということをしっかり示すべきだと私は思うんです。しかしながら、河野談話については政府として踏襲するということをおっしゃっているわけでありますから、そのことをまた強いメッセージとしてアメリカ側に出していくということ、それが私は、知日派、親日派、そしてまた人権派と言われる人たちの理解を広げていくのではないかというふうに思います。
 確かに、いわゆる従軍慰安婦の決議の問題、マイケル・ホンダ議員というのが中心的にやられていて、彼はカリフォルニアの州議会議員のときからこの問題についてずっとやっている。彼の選挙区事情というのが非常に色濃くあって、支持者もそういった方々が多いというのは事実でありますけれども、それを言っても仕方がありません。
 したがって、今申し上げたように、決議案の内容について事実誤認があることはしっかり言う。それについて政府として、ぜひ私は、どこが違うのかということをまとめていただきたいということが一点と、あとは、やはりもう一度大臣からも、河野談話というものは踏襲するんだ、そして強制性の議論については、私は余り意味を持たないと思っておりますが、大臣はどうお考えなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。


○麻生国務大臣 慰安婦問題で女性の尊厳を傷つけたというところは、これはもう間違いない事実なんだと思います。したがって、それに伴って河野談話であり総理の書簡というのがこれまでの経緯だったと存じます。
 それから、今言われましたように、河野談話に関して、事実誤認のところ等々、お話しの点については、いろいろ今やっております。正直なところ、大使館また大使等々でいろいろやっておりますので、どの人にやっているかまでは、ちょっとそこらのところまで申し上げるわけにいきませんけれども、やらせていただいております。
 それから、この問題で国内的に見て一番反論の多かったのは、多分、従軍という言葉だったと記憶をします。従軍は、医者とか従軍記者とか従軍看護婦と従軍慰安婦と一緒かと言われると、従軍というと軍属になりますので、そこで、この話にはすべて、いわゆる従軍慰安婦といって、いわゆるという言葉がたしか河野談話にはつけられておったと私は記憶いたします。そういった意味では、当時の御年配の方々はここが一番ひっかかられるところだったと記憶をいたしますので、その方たちと、当時、私、副幹事長か何かしていたんだと思いますが、そのころいろいろ対応させていただいたのがそれだったと記憶をします。
 したがって、きちんと言うべきことは言う、しかし認めるところは認めないと、これは事実だったという点は確かですから、そこの点は、傷を受けられた方々の痛みというものを十分に知った上で話をしないと、その点だけ取り上げていくとちょっとまた話がおかしなことになりかねぬというところは、私ども同様に危惧するところでもありますので、今言われた点は十分に踏まえて対応したいと思います。


○前原委員 しかるべきルートを通じて、決議案における事実誤認の点については伝わるようにしてあるということでございますが、ぜひこれも、委員長、理事会でお話をいただいて、それを表に出すかどうかは別にして、やはり外務委員会のメンバーぐらいはそういったものを、どこが事実誤認と政府が考えて相手側に伝えているのかということがわかるようなお取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


○山口委員長 これも理事会で後日協議をさせていただきます。


○前原委員 その上で、先ほど申し上げたように、河野談話を踏襲するという政府の姿勢というものは、これからもしっかりと大臣も発信をし続けていただきたい。こういうことで無用の外交問題、そして労力を使わなきゃいけないというのは、私は本当に不毛だと思うんです。建設的ではないと思っておりまして、そういう意味では、やはり我々が責任を負っているものですから、加害者という言い方をしていいのかどうかわかりませんが、加害者の立場としてのやはり遠慮深さ、慎重さ、思慮深さ、謙虚さというものが必要なんだろう、そういうものを踏まえて、これからも議論をしていくべきではないかということを申し上げたいと思います。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0005/16603160005003a.html

平成19年3月19日 参議院 予算委員会 第12号


○福島みずほ君
(略)
 次に、いわゆる従軍慰安 婦問題についてお聞きをいたします。
 河野官房長官談話を踏襲するとおっしゃっています。河野官房長官談話には次のようなものがあります。これも踏襲されるという意味でよろしいですね。
 慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、さらに、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。
 これも踏襲されるということでよろしいですね。


○内閣総理大臣(安倍晋三君) 昨年来、国会においても述べてきたとおり、河野官房長官談話を踏襲していくということはもう既に方針として申し上げているとおりでございます。


○福島みずほ君 河野官房長官談話ははっきり、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった、また最後に、非常に強制の下にあったというふうなことを言っております。
 だとすれば、総理が、狭義だ広義だ、狭義の強制性がということを言うことは、この官房長官談話に明確に反しています。重要なことは本人たちの意思に反して行われたことで、軍がこの発案、設置、管理した慰安所制度自体が強制的なものであったと、痛ましいものであったことは確かなわけですから、これについて広義、狭義と言うこと自身、河野官房長官談話を本当に踏襲されているのかどうか疑問に感じます。
 総理がそのような発言、あるいは答弁書でそういう発言をされることは、この河野官房長官談話をおとしめることであり、また国際社会に向けて誤ったメッセージを発すると考えます。やめてくださるよう強く要請をいたします。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0014/16603190014012a.html

平成19年3月20日 参議院 外交防衛委員会 第3号


○緒方靖夫君 従軍慰安婦問題について質問いたします。
 この問題をめぐりましては、強制性はなかったとする安倍首相発言と日本政府の態度にアメリカやアジア諸国からの批判が広がっております。
 そこでお伺いしますけれども、大臣は今月末に韓国訪問を予定され、そして、そこでは当然、カウンターパートの宋旻淳外交通商相らと会談されると思います。そこで、韓国側が今懸念を表明している慰安婦問題についてどのような立場で会談に臨まれるおつもりなのかをお伺いしたいと思います。


○国務大臣(麻生太郎君) 今月末に訪韓をする方向で日韓両国間で調整中であります。まだこれ日程が、ちょっと国会のあれやら何やらありまして調整ができておりません。したがって、まだ設置もされてない段階で議題について今述べる段階にはないということに御理解いただければと存じます。


○緒方靖夫君 韓国で表明された懸念というのは、日本政府が先週十六日の閣議で、軍や官憲による強制連行を直接示すような記述はなかったとの答弁書を決定した、それに対して外交通商省報道官が論評を発表いたしまして、日本政府が九三年の河野談話を継承する立場を再確認しながらも強制連行の直接関与を認めない姿勢は、過去の過ちを縮小し、歴史的真実を糊塗しようとするものであり、極めて遺憾だと、そう述べているわけです。
 大臣はこうした批判をどのように受け止められているのか、お伺いいたします。


○国務大臣(麻生太郎君) 慰安婦問題についての政府の基本的立場というものは、いわゆる、平成五年でしたっけね、あれは、あの河野官房長官談話というものを継承するというように理解をしております。安倍総理自身も、元慰安婦の方々が極めて苦しい状況に置かれ辛酸をなめてきたことに対し、心から同情しおわびを申し上げると述べておられますので、国会などの立場でも明確に述べられております。
 これまで政府は国会の場において明らかにしてきておりますとおり、いわゆる強制性の話等々につきましては河野官房長官談話の記述にあるとおりだと理解をしております。


○緒方靖夫君 河野談話というのは、やはり私は、今の段階でいうと、やはり非常に大事なことが述べられているということを改めて痛感いたします。ですから、河野談話を継承するというその立場、そのことは非常に大事なわけですけれども、しかしそのそばで、強制性はなかった、狭義、広義と分けていろいろ話が出てくる、そのことに非常に、何というか、そこに矛盾性を感じるというのが先ほど述べた韓国の対応であり、また韓国のみならずアメリカでもそのことが出されているということだと思います。やはり、河野談話は政府による調査の結果、慰安所の設置、管理、移送について旧日本軍が直接あるいは間接的にこれに関与した、募集についても甘言、弾圧等による本人たちの意思に反して集められた事例が多くあって、さらに官憲等がこれに直接加担したこともあったと明確に述べられているわけですね。
 そういうことは、今何が問題になっているかというと、改めて、直接の証拠どうこう、あるいはだれだれがいついつ銃口を突き付けられてどう連行されたとか、そういう具体的な話どうこうということはともかく置いて、今世界の中で大きな問題になっている問題というのは、従軍慰安婦問題の基本的な性格だと思うんですね。それは、日本が植民地化した、あるいは軍事占領したそういう地域からおびただしい数の女性が集められて、そして日本軍が戦場に設置した慰安所に閉じ込められて、そこで性行為を強要されたという問題、その非人間的な行為全体が問題にされているわけですね。
 ですから、その事実、そうした事実があったのかどうか、そのこと自体が、そういう膨大な動きというのは軍の関与、いずれにしても当局の関与なしにはあり得ないだろうという、そういうことを言われているわけですね。ですから、この従軍慰安婦の問題ということ自身が事実であって、またそのために傷を受けた方々が、数は分かりませんけれども少なからずおられるという、そのことは事実ではありませんか。


○国務大臣(麻生太郎君) 一つだけ、これいろいろ言っていくととても十分で終わる話じゃないとは思いますけれども、一つだけ、従軍慰安婦の前にいわゆるが付いていることだけは先生忘れないようにしておいていただかないと、これは従軍ということになりますと、これは軍属ということになります。したがって、いわゆる従軍慰安婦という言葉が付いている、いわゆるの付いている意義につきましては明確にされておかれないと、従軍医者、従軍記者、従軍看護婦と同列のように扱われるとまた話が別の方向に行きかねぬという点は注意をされておかれた方がよろしいのではないかと存じます。


○緒方靖夫君 河野談話にもそう書かれてあることは承知しております。
 私がお尋ねしたのは、そういう事実があったということ、これは当然のことだと思いますけれども、そのことをお聞きした。だからこそ、河野談話は元慰安婦の方々に対して、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を傷付けたとして、心からのおわびと反省の気持ちを表明したと、そういうふうになるんじゃありませんか。


○国務大臣(麻生太郎君) 河野談話に書かれているとおりですと先ほどから申し上げております。


○緒方靖夫君 とすると、政府はその河野談話を継承するなら、文字どおり河野談話にあるように歴史の真実を回避することなく、歴史の教訓としてして直視して潔く行動で示すことが必要だと、そのことを私は申し上げておきたいと思います。
 そこでお伺いしたいのは、政府は河野談話に基づいてアジア女性基金を発足させ、元慰安婦の方々への償い事業を取り組んできました。村山政権以降、橋本首相から小泉首相まで四代の首相がおわびの手紙に署名し、元慰安婦の方々に送ってきました。この手紙の内容については継承されるわけですね。


○副大臣(浅野勝人君) 手紙の内容は、河野談話をそっくりそのまま引用しております。したがって、安倍政権は河野談話を継承すると明言をしております。


○緒方靖夫君 正確に言うと要約して継承しているということですので、当然そうなると思います。明確ですよね。
 そうすると、その河野談話はおわびと反省の気持ちを国としてどのように表すのかということを検討して、その結果として、償い事業としてアジア女性基金をつくったということになります。この基金は今月末にこれは解散されることになりますけれども、その後の事業についてはどのように扱っていかれるのか、お伺いいたします。


○副大臣(浅野勝人君) 基金は国民の皆さんと政府が協力して、心身にいやし難い傷を、深い傷を負った方々に対する償い事業や医療、それから福祉事業、女性尊厳事業を実施してまいりました。
 ちなみに、私は慰安婦という言葉は避けさせていただいておりますので、今のような表現を御理解をいただきたいと思います。
 平成七年の設立以来十二年の間、国民の皆さんからの募金が六億円に上りまして、政府も四十八億円の拠出補助金を出しておりまして、御指摘のアジア女性基金の活動に協力をしてまいりました。同時に、様々な困難な中でこの基金の運用を貫いてこられた故原文兵衛前理事長、村山富市理事長を始めとする関係者の方々が払われてきた努力に改めて深い敬意を表しています。
 過日、解散式に政府を代表して私も出席いたしましたけれども、基金は御指摘のとおり今月末に解散します。基金解散後も基金の事業に表れた日本国民と政府のこの問題に対する真摯な気持ちに理解が得られるように、引き続き努力をしていく考えです。
 ただ、基金がその歴史的使命を終えようとしている今の段階で、政府が基金に代わる新たな組織を立ち上げるということは必ずしも考えておりません。現在、基金において解散後の課題についての検討を行っていると承知をしております。政府は、基金の側のそのような検討の結果を踏まえて、基金の解散後においても、繰り返しになりますが、基金の精神を引き継ぐためにいかなる対応が可能かを政府としても検討してまいりたいと、真摯に受け止めております。


○緒方靖夫君 今答弁にありましたように、是非、積極的な対応を、検討をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
 もう一つ私お伺いしたいのは、慰安婦問題と、それからまた、この間問題になっている拉致問題との関連なんですけれども、アメリカのシーファー大使は、私は慰安婦の証言を信じる、強制性があったことは自明のことと述べています。大使は、もう拉致問題に大変深い理解を持ってアメリカ政権を動かしてきた人です。アメリカでは、慰安婦問題と拉致問題での安倍内閣の対応を比較して批判する世論が出始めているんですよね。私は、これは大変重視する必要があると思っているんですね。
 三月十八日のロサンゼルス・タイムズは、拉致問題では北朝鮮を非難する一方、これは日本がですよ、慰安婦問題では強制性を否定していると述べて、安倍首相は旧日本軍によって恐怖を強いられた多くの女性に対して、拉致被害者のものと同じ同情を持てないでいると批判しているわけですね。シーファー大使は、三月九日、日本人の記者団に対して、日本が河野談話から後退していると米国内で受け止められると破壊的な影響があると、そう発言されているわけですね。
 私は、外務大臣にお伺いしますけれども、大臣はこうした警告をどう認識されているか、お尋ねしたいと思います。


○副大臣(浅野勝人君) 今の委員の御指摘は、心身にいやし難い深い傷を負わせた方々に対する河野談話、そして、それをそのまま引き継いだ歴代の総理がこのアジア女性基金を受け取っていただきたいと思った方々一人一人に、個人個人に手紙を差し上げた、その内容は繰り返しませんけれども、心からのおわびと厳しい反省の上に立ってああいう手紙を差し上げている。それは、河野談話を歴代の内閣が継承していると、今日もそうだと、そのことを十分理解をされていないアメリカを始め各方面に更に日本人の気持ちを理解をしていただくような努力をしていくことがその問題への答えだと確信をしております。


○緒方靖夫君 これは、政府の努力という問題ではなくて、基本的な政策のスタンスだと私は思うんですね。
 やはり、安倍内閣の下で慰安婦に対する問題が後退したと、そういう受け止めがある。それと引き換え、拉致問題との関連でリンクされることは大変危険であり、日本にとって大変厳しい問題だと思うんですね。特に日本は、それを敷衍して言うと、やはり人権問題にダブルスタンダードがあるという批判があるわけですよ。
 例えば、私もいつも思いますけれども、飛行機事故等々が起きる、そうすると、そこに日本人がいるかいないか、それがぱっと日本のメディアではなるわけですね。そんなことをやるメディアは、アメリカでもフランスでもないわけですよ。そういうことを見て、日本人の命は大事、外国人の命は二の次、三の次と受け止められる、そういう風潮があるわけですよね。
 麻生大臣は外国のことをよく御存じですから、そういうことが実際いろいろな形で経験されていると思いますけれども、私は、そういう批判というのは非常に危険な批判で、日本の、今これだけ拉致問題を解決するというそういうことが必要になっているときに、非常に窮地に追いやる、自らの過去の問題との絡みで窮地に追いやる、そういうことになってくると思うんですね。
 ですから、その点で私は、努力が足りないと、アメリカを始めとするところに努力すると、そう言いましたけれども、私は、この問題については非常に重大な問題であるということを指摘して、質問を終わりたいと思います。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0059/16603200059003a.html

続きます。

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