平成19年3月26日 参議院 予算委員会 第13号
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子でございます。
安倍総理に慰安婦問題についてお伺いいたします。
安倍総理は、三月一日の夜、官邸で記者団の質問に答えて、九三年の河野官房長官談話について、当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だと語られました。そうですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に今まで何回か答弁を申し上げているわけでございますが、私は河野官房長官談話を継承していくということを申し上げているわけでございまして、そしてまた慰安婦の方々に対しまして御同情を申し上げますし、またそういう立場に置かれたことについてはおわびも申し上げてきたとおりでありまして、今まで答弁してきたとおりであります。
○吉川春子君 当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だと、このようにおっしゃったんですか、おっしゃらないんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、今まで累次この場においてもまた本会議の場においても答弁をしてきたとおりでございまして、それを見ていただければ分かるとおりであります。
○吉川春子君 そういう発言はなかったと、取り消されるんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 累次、今まで答弁してきたとおりでございます。
ですから、今、吉川議員がおっしゃったことも私は答弁をしてきた中の中身でございます。
○吉川春子君 総理が記者会見で官邸でおっしゃったかどうかだけを私伺っているんですけれども。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 強制性について私が申し上げたことは、記者会見で申し上げたことはすべてこれはニュースにもなっておりますから、それはそのとおりであります。
○吉川春子君 官房長官談話では、広範な地域に慰安所が設置された、慰安所は軍の要請によって設置された、慰安所の管理運営、慰安婦の移送について旧日本軍が直接又は間接に関与したとしております。これはお認めになるんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど答弁をいたしましたように、河野官房長官談話を継承しているということは、この官房長官談話を正に引き継いでいるわけでありますから、その中身も、それを引き継いでいるということでございます。
○吉川春子君 さらに談話では、慰安婦の募集について、本人の意思に反して集められた、官憲が直接これに加担したこともあった、慰安所の生活は強制的状況で痛ましいものであったと言っていますが、これもお認めになりますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野官房長官談話を継承すると、このように申し上げております。
○吉川春子君 お認めになるんですね、今言ったこと。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) そうです。
○吉川春子君 河野談話の内容と、それから首相官邸での記者会見の強制性はないという発言は矛盾すると思いますが、談話を受け継ぐとおっしゃるならば、この発言は取り消されたらいいと思うんです。いかがでしょう。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) そうした発言も含めて今私は答弁をしているわけでございますが、この河野官房長官談話を継承していくということでございます。
○吉川春子君 今年一月三十一日、米下院外交委員会で慰安婦について決議案が出され、二月十五日、慰安婦被害者三女性、つまり、オランダ人一人、韓国人二人が証言しました。
安倍総理は、この証言内容について強制性を裏付ける事例、証拠というふうにお考えになりますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この米議会の証言について私がここでコメントする立場にはございませんが、河野官房長官談話について、これは継承していると、継承していくと申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 強制性を裏付ける証拠がないというふうに言われているわけですけれども、これは強制性を裏付ける証拠であるというふうにお考えになりませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 米議会における証言については、私はここで立ち入ることはいたしません。既に私も累次その強制性については申し上げてきたとおりであります。
○吉川春子君 外務大臣、お伺いしますが、この三人の証言のうちの一人はオランダ人です。オランダ人が慰安婦にされた経過はどのように報告されていますか。
○国務大臣(麻生太郎君) 経過ですか。
○吉川春子君 そうです。
○国務大臣(麻生太郎君) インドネシアはオランダ領だったんだと思いますが。
○吉川春子君 それだけでは慰安婦は発生しませんね。その後どうなったんですか。
○国務大臣(麻生太郎君) 今の御質問の内容は、その経過はと言われたんで、インドネシアはオランダ領だったから起きたと申し上げたところまでは御理解いただけているという前提でよろしゅうございますね。
○吉川春子君 はい、結構です。
○国務大臣(麻生太郎君) その後、先ほど河野官房長官談話の話というのを安倍総理からずらっと言われた一連の関係の中にすべて物語っていると私もそう思います。
○吉川春子君 オランダ人は強制収容されて、強制収容所から女性たちが軍隊によって拉致されて慰安所に入れられたと、こういうことですね。
○国務大臣(麻生太郎君) 私は、その方の証言はそうなっておるというように理解しております。
○吉川春子君 アジア女性基金の報告書はそれと違う内容になっていますか。
○国務大臣(麻生太郎君) オランダのところ、オランダ人のところの細目はよく存じませんけれども、そのようになっておるかどうか、ちょっと今のこの段階で存じているわけではございません。
○吉川春子君 事務局、答えてください。通告してあるでしょう。
○国務大臣(麻生太郎君) 事務局から何か言われておりませんので、私が代わりに読ませていただきます。
平成五年八月、河野官房長官談話の際に発表された調査結果でも明らかにされているとおり、現在、インドネシアに慰安所が存在したこと及び慰安婦の出身地としてオランダが含まれていることは確認されましたと書いてあります。
○吉川春子君 強制収容所にオランダ人を収容し、その中から若い女性だけを選んで拉致して慰安所に連れていった、この証言があったと外務大臣言われました。これは強制性に当たらないんですか、総理大臣。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) このオランダ人の女性も含めてこの官房長官談話は出されているわけであります。ちなみに、軍がその事実を知って直ちに慰安所を閉鎖したと、こういう事実関係があるわけであります。
○吉川春子君 軍が関与し、強制されて慰安婦にされたんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、つまりその事実を軍が知って、軍がその慰安所を閉鎖をしたと、こういう事実関係がございます。
○吉川春子君 法務省に伺います。
平成十六年十二月十五日、東京高裁において中国山西省の慰安婦の事件が判決が出ましたけれども、事件の背景事情としてどのようなことが認定されていますか。
○政府参考人(大竹たかし君) お答えいたします。
御指摘の判決は、原告らの主張は法的根拠がないとして請求は棄却されておりますけれども、その御指摘の判決文によりますと、旧日本軍の北シナ方面軍が一九四〇年から四二年にかけて、いわゆる三光作戦を実施する中で、日本軍構成員らが駐屯地近くに住む中国人女性を強制的に拉致、連行して性的暴行を加え、監禁状態にして、いわゆる慰安婦状態にする事件があったとの事実認定がなされております。
ただ、判決文において、慰安所においてそのような行為が行われたという事実は認定されておりません。
○吉川春子君 四人の控訴人の中の二人の女性の事実について報告していただきたいと思います。
○政府参考人(大竹たかし君) 判決文によれば、原告の供述に基づいて以下のような事実を認定したということでございます。
まず、原告のうち十五歳の未婚の女性については、一九四二年、日本軍兵士らによって自宅から日本軍の駐屯地のあった村に拉致、連行、監禁され、複数の日本軍兵士らに性的暴行を繰り返されたとされ、もう一人の未婚の原告については、一九四二年、三人の中国人と三人の武装した日本軍兵士らによって無理やり自宅から連れ出されて日本軍駐屯地に拉致、連行、監禁され、上記三人の中国人のほか多数の日本軍兵士らによって性的暴行を加えられたとされております。
○吉川春子君 この事実について、強制の事例と安倍総理大臣、お認めになりますね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) いわゆる従軍慰安婦については河野官房長官談話で申し上げているとおりでございます。
○吉川春子君 日本軍が拉致、連行して慰安婦にしたという事実を裁判所が認定していますが、これは認めますか。証拠になりませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この裁判の結果については、これは国側が勝訴していると、このように承知をしておりますが、いずれにせよ、河野官房長官談話で述べられているとおりであります。
○吉川春子君 日本軍の兵士による拉致、連行によって慰安婦にさせられたという事実を裁判所は認定しているんです。それを強制性と認めるかどうかということを安倍総理に聞いています。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これ請求自体は棄却をされているわけでありまして、この判示の事実認定部分は傍論であるということでございまして、言わば法律上重要ではないと、このように考えております。
○吉川春子君 それでは、証拠にはなり得ない、総理のおっしゃる証拠にはなり得ないということですか。確認します。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 これを、裁判所の認定は認めるのか認めないのか。否定するんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 甘言であれ、強制連行、拉致であれ、慰安所は日本軍管理下の下、逃げられず、慰安婦とされた女性たちは毎日レイプされたんです。ワシントン・ポストによれば、身の毛のよだつような体験の証言をしたと、こう言っているんです。これをもって強制性はなかったとそれでも総理大臣はおっしゃるんですか。そのことを端的に、あなたの考えを言ってください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に私の考えは申し上げているとおりでありまして、河野官房長官談話で述べられているとおりでございまして、この考え方を継承していくということでございます。
○吉川春子君 兵士による拉致、連行も河野官房長官談話の中に含まれているということでいいですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいまの裁判の事案につきましては、別途私が答弁したとおりであります。
○吉川春子君 裁判の事案でなくても、オランダも挙げました。どうですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) オランダの事案につきましては河野官房長官談話で述べられたとおりであります。
○吉川春子君 オランダの事案は、日本軍による拉致、連行によって慰安婦にさせられた事例です。それを安倍総理はお認めになったということですが、安倍総理、慰安婦の被害者の女性たちが今何を一番望んでいるとあなたはお考えですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、もう常々申し上げておりますように、慰安婦の方々が辛酸をなめられたわけでありまして、御同情申し上げますし、当時そういう状況に置かれたことにつきましてはおわびを申し上げているとおりであります。
○吉川春子君 今日までまだPTSDで苦しんでいるんですよ。日本政府が本当に心から公式に謝ってほしいと思っているんです。
総理、公式に謝る必要があると思いませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、私はここでおわびを申し上げているわけであります。内閣総理大臣としておわびを申し上げているわけでありますし、河野官房長官談話で申し上げているとおりであります。
○吉川春子君 河野官房長官談話は閣議決定されていません。
それでは、閣議決定しますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野官房長官談話ですべてでございます。
○委員長(尾辻秀久君) 時間が参っております。吉川春子君。
○吉川春子君 安倍総理、一度被害者に直接お会いいただきたいと思います。細田元官房長官はお会いになりましたけれども、安倍総理も直接、慰安婦にお目に掛かって謝罪をしていただきたい。そのことを最後にお願いします。いかがですか。
○委員長(尾辻秀久君) 時間が過ぎておりますから、指名はいたしません。
以上で吉川春子君の質疑は終了いたしました。(拍手)
○委員長(尾辻秀久君) 次に、福島みずほ君の質疑を行います。福島みずほ君。
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
河野官房長官談話を踏襲されるとおっしゃいましたが、閣僚の中でそれに反する発言が出た場合は、それを注意をしてくださいますね。安倍内閣の下では絶対に認めないということでよろしいですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 継承すると申し上げてあります。
○福島みずほ君 問いに答えてください。
閣僚で違う発言、特別補佐官で違う発言をした人間をきちっと注意をしてくれますね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私がもう既に総理として申し上げているとおりであります。
○福島みずほ君 総理ではなく、質問に答えてください。他の閣僚や他の大臣、他の特別補佐官の違う発言を許さないということの確認を取りたいんです。どうですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 内閣として継承しておりますから、そういう事態にはなりません。
○福島みずほ君 では、きちっと注意をお願いします。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0014/16603260014013a.html
平成19年3月27日 衆議院 国土交通委員会 第8号
○泉委員
(略)
次に、大臣に、ちょっと時事ネタというか、多少お答えづらい話かもしれませんが、お伺いをしたいと思います。
まず一つ目は、下村官房副長官が発言をされた件であります。従軍慰安婦問題で、旧日本軍の関与なしということをおっしゃられました。その言葉の趣旨は、軍による強制連行がなかったということでの発言だというふうにお話を、その後、改めて会見ではされているようなんですが、私自身は、やはりこういう発言というのは、非常に物議を醸すというか、他国にはなかなかそのまま正確に伝わる性質のものではないというふうに思っておりまして、その辺の大臣の御認識、この発言についての御感想をまずいただきたいと思います。
○冬柴国務大臣 私もそのような新聞報道は見ましたけれども、政治家がそれぞれ、その責任と、そして信念と申しますか、そういうもので発言されるものであろう。そして、その結果は、やはり自分が、あるいは国民からの評価を受けることになるだろうと思います。
私どもは、政治家がそれぞれの信念に基づいて発言していられることについて、私からそれをコメントするということは差し控えさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
○泉委員 大臣の、いわゆる従軍慰安婦問題、それについて軍の関与があったかなかったかということの御自身の御見解はございますでしょうか。
○冬柴国務大臣 これにつきましては、私は、内閣の一員としましても、今は議長になっていられますが、河野官房長官の談話というものに尽きているというふうに思うわけであります。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0099/16603270099008a.html
歴史的に、私は研究したことはありませんけれども、いろいろな文献等がありますので。私も戦前生まれでございまして、ある程度戦争も知っていますけれども、そういう従軍慰安婦がおったかどうかというところまで知る年齢ではございませんでしたので、体験はありません。したがって、文献その他ですけれども、私の公式的な見解は、河野官房長官の談話に尽きている、そのように思っています。
平成19年3月27日 参議院 厚生労働委員会 第7号
○福島みずほ君 社民党の福島みずほです。
まず冒頭、これは質問通告してなくて申し訳ないんですが、内閣の構成員としての大臣の見解をお聞きしたく、一問質問いたします。
下村官房副長官が昨日の夜の記者会見で、いわゆる従軍慰安婦問題について、直接的な軍の関与はなかったと私自身認識しているとのお考えを示しました。若干また夜、訂正をし、強制連行について軍の関与はなかったということを述べたものだと修正をされましたが、柳澤大臣、この下村官房副長官の発言についての見解をお聞かせください。
○国務大臣(柳澤伯夫君) これはもう度々、安倍総理がおっしゃられていることですけれども、この従軍慰安婦の問題については、内閣として河野談話をそのまま引き継ぐということでございますので、官房副長官もそうしたことをきちっと踏まえて発言をなさっているものと私は受け止めている次第です。
○福島みずほ君 河野官房長官談話と下村官房副長官の直接的な軍の関与はなかったというのは明確に矛盾をしていますが、いかがですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) これは、私、下村官房副長官の談話をよく詳細知らないわけでありますから、それについてコメントをするということは元々困難であるとしか申し上げられません。
○福島みずほ君 報道では、直接的な軍の関与はなかったと私自身認識している、強制連行について軍の関与はなかったということを述べたものだと修正していらっしゃいますが、明確にこの記者会見の中身は河野官房長官談話に反しています。これについていかがですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) それはもうさっきのお答えと同じでございまして、報道での話でもって私がいろいろ下村副長官のこの考え方というかその表明された御意見についてコメントをするということは、やっぱり適切でないと思います。
○福島みずほ君 明確にこういう発言していることが明らか、報道の中でこういうふうに発言しているというのが明らかです。これは副官房長官として重要な問題であるというように考えます。
河野官房長官談話と、では、下村官房副長官が、直接的な軍の関与はなかったと私自身認識している、これは明確に反するのではないんですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) それはやっぱり、福島委員のお言葉ではありますけれども、やはり私がここで何かこのコメントをするということは、これはもう実際上可能でないわけですね、本人の言っていることを知らないわけでありますから。報道で今、福島先生がそうおっしゃられますけれども、そういうことについて私がコメントをするというのは適切でないと思います。
○福島みずほ君 では、確認をされた後、また再度御質問したいと思います。これは重要な問題で、しかも昨日、予算委員会で安倍総理に内閣としてどうかという確認をしておりますので、内閣の不一致、あるいは官邸の不一致ということで大問題だと考えます。また、官房副長官が誤ったメッセージを国際社会に発する問題であると考えますので、確認をされた後、またこの委員会で質問をいたします。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0062/16603270062007a.html
(略)
平成19年3月28日 衆議院 外務委員会 第5号
○山口(壯)委員
(略)
そして、きょうの日経新聞をぱらぱら見ていましたら、従軍慰安婦の話が出ているんですね。これは私は、意図的に今まで全然取り上げていません。というのは、安倍さんが、広い意味の強制とか狭い意味の強制とか言っていましたけれども、あれは正直言って稚拙です。政治家としては、河野談話を継承する、ピリオド、これでいいです。あとは歴史家に任せた、こうあるべきだったんです。それを広いだの狭いだのと言ってしまったから、物すごいかみつき方をされている。それを踏まえて私はあえてここではこれまで全然議論していません。そこら辺をまず酌み取っていただきたいと思うんです。
しかし、アメリカは相当深く心配していますね。この批判の中に、河野談話、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」この調査したサンプルというのは限られているわけです。そういう意味では、この調査がすべてではない。しかし、この調査した限りにおいては、「官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。」
我々、新しいページをめくらなきゃいけないんですね。だから、こういう古いページはもうピリオド、ぴたっと、こうするのが本当は政治家の役目だと思うんです。古いのをめくって、ああでもなかったこうでもなかったというのは、これはむしろ歴史家に任せておいた方がいい。
ただ、ここで、「官憲等が」と言っているんです。だから、これは軍と違うじゃないか、こういうことを言いたい人が何人かいるんですよ。先ほどもおられたから、私も、そうだ、きょうは彼も呼んでおくんだったなという気もしたけれども。
しかし、これは余り議論しない方がいいんです。だから、我々もあえて意図的に議論していません。だから、ぜひ、外交をつかさどる麻生大臣としては、余計なことを言うなということを官邸にもしっかり指導されて、この問題については早く新しいページをめくる。河野談話でいいです。
これであればアメリカも、アメリカもというのは、別に国だけではなくて、ほかのところもみんなこれでオーケーになるはずですから、ぜひこの問題については、古いページは早く閉じて、新しいページをめくれるように、外務大臣として、国内の指導的な役割についてもぜひお願いしたいと私は思います。
○麻生国務大臣 山口先生、昔と違いまして、今、これをやると大体一時間後にはもう通訳、訳文されたものをみんな読むという時代になりまして、ここで、この二週間ぐらいの間、麻生太郎と塩崎官房長官、安倍総理との間でどのような形でその対応をしてきたかというのをちょっと言いますと、途端にまた話がいろいろ忙しいことになりますので、私どもとしては、どうしても知りたいというんだったら、こういう場所以外できちんとお答えいたしますけれども、ちょっとここで言いますと、多分これをそのまま見て、日本はちゃんと民主党と組んで裏でこんなことしておるなんて言われたんじゃ、お互いおもしろくないことになりますので、きちんと対応させていただいております。
○山口(壯)委員 大臣、ということは、政治家としては新しいページをめくるということに重点を置いていこうという決意としてとってよろしいでしょうか。
○麻生国務大臣 新しいページをめくっていく、この間の日中、日韓の首脳会議においても同様な意識を持たれておるようだと思いますけれども、私も全く、これからの時代、建設的な話に切りかえていこうという山口先生の御趣旨に賛成であります。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0005/16603280005005a.html
平成19年3月28日 衆議院 内閣委員会 第8号
○戸井田委員
(略)
従軍慰安婦の問題、慰安婦問題でも、あの当時、全部そういう調査をしたわけですよね。調査をして、そしてその資料もマスコミには発表したということを言われておりました。だけれども、結局、返ってくる反応はそういうことではなしに、そのときの現場にいた、当時の慰安婦とされる人たちの文言が非常に影響力を及ぼしてきた。そしてその当時、聞くところによりますと、これで認めてくれたら、その後一切慰安婦問題を問題にしないからということを言われたように聞いております。
その辺のところは、官房長官、御存じですか。
○塩崎国務大臣 例の官房長官談話に至る間にさまざまな調査をしたということは聞いておりますが、今お話のあったような、つぶさな、細かなところまでは聞いておりません。
○戸井田委員 というと、やはりなかなか、役所の方々の、いろいろな資料を持ってきていただく、答弁のときの答弁書が出てくる、それが一番安全なんだろうとは思うんです。だけれども、こういう歴史問題というものをとらえていくときに、本人がその問題に対してどういう思いがあるかということがやはり非常に重要な部分があると思うんですね、特に政治家の場合には。
実はきのう、こういった資料でどういう質問をしようかと思って考えているときに、テレビがたまたまついていたんですけれども、宮崎駿監督のをやっていたんですね。思わずそっちに引き込まれていって、そうしたら、宮崎さんは一言、自分が映画をつくるときは、この映画一本で世の中を変えるんだという思いでつくるということを言っていましたね。なるほどなと思って、それを見ていて、その言葉だけが印象に残っていたわけですけれども。
やはり政治家もそういう意味では一緒だろうと思うんですね。政治に携わる人間はたくさんおりますけれども、自分たちの行動で変えていくという思いがやはり必要なんだろう。そうすると、役所の方からもらう資料だけでもってそういう気持ちがわき上がってくるだろうかということを思うと、やはり自分でこういうのを調べていくというのは非常に重要なことだなというふうに思ったんですね。
その資料をお渡ししたときに、官房長官は多分忙しくて読むことはできないだろうと思ったんですけれども、あえて、ちょっと、一ページでも二ページでも見てくれたら、またそこでもって、戦後の日本の社会の中で何が行われていた、どんなことが起きていたのか、我々戦後生まれの人間からすると、その当時のことを記憶にないわけで、記憶にというか、そもそもそのことがわからないわけですから。そうすると、そういう資料を当たっていくということ、そのことによって得るものというのは実はたくさんあって、その後にいろいろ耳目から入ってくるものとまた違ったものがあると思うんですね。そういう意味で、この一次資料というものを非常に大事にしていきたい、そんなふうに思っております。
そして、従軍慰安婦問題、我々は慰安婦問題ということを言っておりますけれども、その慰安婦問題で、アメリカだけでなしに、どうも最近はヨーロッパの方でもそういう騒ぎになっている。その内容を見ていると、どうもその辺のことを、内容すべてをわかってもらっていないな、一次資料を見てもらっていないなという思いがあるんですね。それだとしたら、やはり日本政府としてそういうものをきちっと発信していかなきゃならない。だけれども、一方で、河野談話という一つの縛りがあるということなんですね。だけれども、そういう中でもって、そういうものを突き崩していくのは、やはりそういう一次資料なんだろうというふうに思います。
同時に、外国との交渉ということを考えてみますと、必ずしも真実だけが評価されて、そしてそれが社会の中で認められていくとは限らないというふうに思うんですよ。そういうことから考えてみますと、日本もやはり、ある意味で、自分たちも同じように戦後やられていたわけですね。やられていたと言うとあれですけれども。
前回のときに、昭和二十八年の社会党の藤原道子議員の議事録を読ませていただきましたけれども、独立後、八カ月間において千八百七十八件、暴行事件が米兵によって起きているということがあるんですね。こういう事実というのは、我々にしてみたら、全然知らなかった。しかし、議事録を見てはっきりそういうものに気がついて、また、議事録を頼りにずっとしてくると、米軍のしてきた実態というのが見えてくる。
一緒にその資料を調べていっていたら、今資料としてお配りしていますけれども、昭和二十年八月三十一日の「進駐軍ノ不法行為」というのがあるんですね。これは、昔、日本に憲兵隊、特高警察というのがありましたけれども、この特高警察というのは一九四五年の十月四日に解散させられているんですね。終戦後、その解散させられるまでの間、特高警察は何をやっていたのかというと、米軍の素行調査をやっていたわけなんですね。そういう記録がやはり残っている。八月三十日にマッカーサーが入ってきて、そして同じように進駐軍が入ってきた。入ってきたその日にもう既に暴行事件が起きている。そんなことが、こういう資料を見ていくに従ってどんどんそれが出てくる。
資料の三ページ目なんですけれども、ここに「米兵ノ不法行為第一報」ということで「強姦事件」「八月三十日午後六時頃」「横須賀市」あとは墨で塗りつぶされております。非常に読みにくいんですけれども、「右一人ニテ留守中突然米兵二名侵入シ来リ一名見張リ一名ハ二階四丈半ニテ」これは人の名前だと思うんですけれども、「ヲ強姦セリ」「手口ハ予メ検索ト称シ家内ニ侵入シ一度外ニ出テ再ビ入リ女一人ト確認シテ前記犯行セリ」ということなんですね。
こういうふうにして一つ一つの米兵の犯罪行為を特高警察が調べていて、それが記録に残されていた。それが一度アメリカに持ち帰られたんだけれども、アメリカの偉いというかすごいなと思うところは、それをまた日本に返してきた。気がつかなかったのかどうかわかりませんけれども、返ってきた資料がその官房長官の手元にある資料なんですね。それ以外にも、ファイルとして、三百七十七ページにわたってそういったものがある。
そういうことをやはり調べていく。そしてそういうことを頭に入れておく。日本が戦前にやった行為というのはどういうことか。我々の世代は、自分たちがその時代に生きていたわけじゃないからわからないけれども、やはり、こういった資料を当たっていって、両方のこともきちっと頭に入れておいて初めていろいろな交渉ができるんじゃないかなというふうに思うんですね。
官房長官、その辺、どう思われますか。
○塩崎国務大臣 一般的に、歴史は史実に基づいて検証されなければならない、こう思っております。一次資料が大事だということも事実でありますが、歴史の評価というのは、これは何度もいろいろな方が言っておられますけれども、歴史家が評価するものでありますが、我々としては、もちろんできる限りの資料に基づいて判断をしていくべきことだろうと思います。
○戸井田委員 そういうことで、確かに歴史問題は歴史家に任せるという総理の言葉どおりだろうというふうに思うんですね。
だけれども、例えば、慰安婦問題でもって、我々が日本人として考えなきゃならないことというのは何なのかなということを考えると、やはり当時と今とは時代が随分違う。公娼制度というものがあった。そして、その公娼制度がなぜそういうふうにでき上がってきたのか。そして、我々が伝え聞く話にしても、東北地方でもって、朝星夜星をいただきながら泥まみれになって働きながらも、それでも飯が食っていけなかった。そして、口減らしにということでもって働きに出すということがあった。働きに出すだけじゃ残った人間も食べられないから、そういう公娼制度の中に入っていって、隠れながらも禄を稼いできて家に送る。最初にそれを金で、その肩がわりに働かされたということもあるわけであります。しかし、そういうのは、言ってみれば昔の「おしん」の時代そのままなんだろうなというふうに思うわけですね。
そのときに、本来、男として、稼ぎ手が、自分が働いて稼げない。それで自分の嫁さんを、また自分の娘をそういうふうにして送り出さなければならない。わかったようなわからないような状況の中でもって、じっと我慢しながらそれを送り出す男の立場もあった。出ていく女性の立場もあった。どちらも苦しい問題だと思うんですね。
決してそれが、そういうことをやりたいと思ってやったわけでもなかったということを考えていけば、そういうことに対する反省、また一方で、そういう仕組みがあったからこそ逆に生き長らえることができたということも、その時代にはあったんだろうと思うんですね。やはり、そういうことをしっかりと考えていく必要があるなということを、私は正直言って、この慰安婦問題を考えたときにそういうことを思いました。
外国がどういう状態かわからないけれども、朝鮮にしても中国にしても、当時の日本とどっちが経済的には上だったのか、そういうことを考えてみると、類推はしていけるんだろう。外国の類推はする必要ないかもわかりませんけれども、やはり、そういうことを考えていくのが、今我々本来の、本当の慰安婦問題に対する意味はそこにあるんじゃないかなというふうに思うんですね。
もう一つ、南京問題も最近出てきております。先日、産経新聞に出ておりましたけれども、中国の歴史学者が二人来て、これまで言っていた三十万という数字を、それはちょっと確認できないような言い方をされているわけですね。
「一九三七年末の南京事件を研究している中国人研究者二人が三十日、都内で講演し、「現在の資料によって、南京事件で日本軍によって殺害された中国人の数を確定することはできない」と強調し、中国などで流布している三十万から四十万人の虐殺説に疑問を呈した。」この人らは、学者としてずっと、そういうことを訂正して、本当に純粋に、学術的にこれを検証していく必要があるんじゃないかということを言っているわけです。
その一人の程氏は、「中国内での反日感情の高まりを挙げて、「中国の学者にとって、確かに難しい面がある」と述べて、中国人研究者への当局からの圧力を示唆した。」という新聞の記事も出ているんですね。
そして、「最後に、「中国人研究者による南京事件の研究態度について、変化が出ており、日中双方で学術的で、客観的な立場で議論をすることは重要だ」と強調。このうえで、両氏は欧米の研究者など第三者も交えて議論を深めていく可能性にも言及し、異口同音に、日本あるいは中国の立場という枠組みを取り払って、人類史という観点から研究を行う必要性を強調した。」というふうにこの記事には出ているわけですね。
私が気になったのは、この人類史という言葉なんですね。中国は、どちらかというと今まで、虐殺ということで、アウシュビッツのホロコーストと同じ次元でもってこの南京問題をとらえよう、とらえようとしてきた経緯がある。
そういうことを考えてみると、三十万は引っ込めてきたけれども、では、ほかのところでいろいろな数字がある。東京裁判で、松井石根大将の判決のあれが十万だ。そしてそれ以外にも、全部含めて二十万という数字も出てきている。前回の質問で私が言いました、顧維鈞代表が国際連盟での演説の中で言っていたのは、ニューヨーク・タイムズの記事を引用したような形でもって二万という数字が出てきている。しかし、この二万とか三十万とかにこだわらずに、ただそういう虐殺があったんだということを認めようとしている経緯があるんじゃないかな、私にはそういうふうに思えてくるんですね。
もしこれが、かつての慰安婦問題と同じように、情にほだされるというか、日本人のあいまいさでもって簡単にそれを、まあ数は少ないけれどもあったんだみたいなことを認めたときに、どういう手だてが出てくるかということを考えると、そこらのところはきちっとした対応をしていかないことには、それこそ、日本人も虐殺民族なんだということを言われかねない可能性があるというふうに思うんですね。
今、日中の歴史問題を専門家でやっていますけれども、そういうことに対して官房長官はそういう視点というのはあるのかどうか、お聞きしたいなと思います。どうでしょうか。
○塩崎国務大臣 先ほど、一次資料が歴史の検証には重要だということを申し上げました。ただし、歴史の一次資料というのもさまざまな一次資料があって、どの一次資料で判断をするのかというのはいろいろあろうかと思います。だからこそ歴史家にその判断をゆだねるという部分があるわけでありまして、この日中の歴史共同研究を、昨年の十二月ですか、十月の安倍総理の日中首脳会談で年内に立ち上げるということで、昨年末にその第一回の会合を北京でやって、今月の十九、二十とまた東京で第二回をやられます。
したがって、これら共同研究に携わる両サイドの歴史家がそれぞれの資料を持ち寄って議論を闘わせて、一つに収れんするということは恐らくないんだろうと思いますが、それぞれ思いのたけを述べ合って歴史をお互いに共同研究していく中で、これは相互の理解を深めていくために、過去のためではなくて未来のために歴史を研究する、こういうことだろうと思います。
今、ホロコーストの話等々がございましたけれども、いずれにしても、南京事件の問題もこの共同研究の中で取り上げられて、それこそ先生のおっしゃる一次資料をお互いが持ち寄って大いに研究をする、そして議論するということになろうかと思います。その中からどういう合意されるものが出てきて共有できるのか、できる限りそれは共有できた方がいいわけでありますので、我々としてもこの共同研究に期待をしているところでございます。
○戸井田委員 そういうことで歴史学者が共同研究をする。日本は自由と民主主義を基本理念とした国家であります。中国は若干違うと私は思うんですね。さっきの産経新聞の記事にもありましたように、当局の圧力を示唆したというのが出ておりましたけれども、そういうことを含めて考えてみると、やはり最後は政治的な問題になってくるんじゃないかな、そんな気がするんです。
官房長官は、お伺いしたいんですけれども、中国という国には言論の自由があると思いますか。
○塩崎国務大臣 他国のことでありますから、自由があるかどうかという判断は、政府としては申し述べるべきようなことではないのではないかというふうに思います。
○戸井田委員 そうやって答えられるだろうなと思っていたんですね。だけれども、顔を見れば、何となく心に描いていることはよくわかる。
韓国はどうですか。やはり言論の自由があると思いますか。
○塩崎国務大臣 いずれにしても、他国のことでありますから、政府としてのコメントは差し控えたい、こう思っています。
○戸井田委員 その資料の後ろにつけてありますけれども、ちょっと一言発したことでもって職を離れなきゃならない、そういうようなことが韓国にも現実にあるわけですよ。我々が見てもかなり激しいなと思うような動きが多い。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/166/0002/16603280002008a.html
そういう国を相手にして慰安婦問題もやらなきゃならない、また南京問題もやらなきゃならないということになると、やはり自分たちの腹構えというか、腹の中をきちっと固めておかなければならない、それが私は一番重要だと思うんですね。だから、宮崎駿監督のあれじゃないけれども、自分たちがその交渉をするときには、これで日本が変えられたらかなわない、絶対に変えさせないぞという思いでもってやる必要があるのかなと。
余り肩ひじ張る必要はないのかもわかりませんけれども、しかし、そういうふうにして今までこの慰安婦問題を振り返ってみたときに、河野談話というものを出した、そのものに対してのじくじたる思いというのはやはり政府側にはあると私は思うんですよ。そういったことをやはり反省の材料として、これから日中歴史問題に対してきちっと対処していっていただきたい。
そのためには、長官みずからもそういう歴史の資料に暇のあるときには当たっていただいて、やはり少しずつそういうことを、本当にえっと思うようなのがありますから、そして、その資料というのは、日本側の資料を使うんじゃなくて、外国の資料を当たっていくということが非常に大事だと思うんですね。そういうものを闘うときに、闘うと言ったらあれですけれども、議論するときに、相手の資料を使ってそのことをついていくというのは非常に重要な意味があると思っております。我々、検証した資料というのはほとんど外国の資料なり国連の資料であったりそういうものばかりで、ほかのものを一切、これまで巷間議論されてきたような、そういう出所のわからない写真で議論するようなことをせずに、やはりきちっとわかったものでもって議論していく、それがやはり相手に対して説得力を高めていく一つの方法なんじゃないかなという気がするんですね。
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